[box04 title=”3行で言うと?”]
- 文字単価≠時給であることを意識しよう
- 案件を工数に換算して、必要工数と単価のバランスを見よう
- 専門分野の他に得意分野を作ろう
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初心者Webライターにとって、案件の単価を上げていくことは、ライター業を続けていく中でもっとも気になるポイントのひとつではないでしょうか。
クラウドソーシングで見かける案件は文字単価0.5円から1円と低単価が多く、はたして生活していくのに足りる収入が本当に得られるのか、不安を覚える案件が少なくありません。
効率よく稼ぐ案件を見抜くには、一体どうすればいいのでしょうか?実は、着目するポイントは文字単価ではなく、時間単価にあります。
今回は私がかつて駆け出しの頃に陥った失敗談を元に、初心者ライターが陥りやすい低時給の回避方法と、効率よくコスパのいい案件をこなすためのポイントを紹介していきます。
目次
文字単価≠時給であることをまずは意識しよう
Webライターになると、通常の給与形態にはない「文字単価」という報酬の概念と出会うことになります。
文字単価とはシンプルに、1文字当たりの報酬金額を指します。実際には1文字ずつに支払われるわけではなく、最低必要文字数と文字単価を掛け、記事単価として支払われることが大半です。
つまり、最低1000文字以上の記事を書いた時、1文字1円なら1,000円、1文字4円なら4,000円です。そのため、Webライターは文字単価が高い案件を重点的に狙う傾向があります。
高単価と言われる案件は2円前後が多く、初心者向けの案件では0.5~1円が中心です。Twitterやクラウドソーシングサイトで多く見る価格設定でしょう。
改正薬機法に対応したり、IT分野の知識が必要になるなど、専門性が高くなってくると4~5円以上が増えてきます。このあたりから、企画構成からすべて手掛ける案件の割合も増加します。
10円以上になってくると、SEO施策のための調査、企画立案からアポ取り、取材、執筆、監修まで含むような、記事執筆を離れてコンテンツ制作全体に関わる依頼が多くなります。
難関と言われる国家資格と実務経験を必要とするような案件は、単価100円を超えるものも少なくありません。そのレベルになると、実際の執筆はせず、監修だけのお仕事もあります。
同じ3000文字でも、0.5円の案件は1500円、5円の案件は15000円。
「どうせやるなら5円の案件がいい」と思うのは誰しも同じです。Webライターの目標の一つとして「高い文字単価を目指す」が挙げられるのは自然な流れでしょう。
しかし、はたしてその記事を書き上げるのに、何時間かかるのでしょうか?
文字単価は時給ではありません。安易に文字単価ばかりに目が行くと、とんでもない落とし穴が待っているのです。
少しややこしい…!文字単価という報酬の単位
3000~4000文字で文字単価1円と言われると、同じ案件でも3500文字書けば3500円、4000文字なら4000円と思う方もいるかも知れません。
そのせいか、文字数を少しでも多くするために、記事内で冗長表現を多用してしまう人も見受けます。
しかし、実際は文字単価が書かれていても記事単価での発注が中心です。1文字1円で3000~4000文字の記事執筆が発注された場合、「最低3000文字、最大4000文字で執筆してください。文字数を問わず1記事3000円です」ということと同義になります。
記事単価で発注するのに文字単価が残っている理由はわかりませんが、14~5年前、WEBライティング界隈の黎明期にあった「1KB単価」の名残なのかもしれません。
あるいは、1文字という最小単位の単価は、ライターの受注単価の指標にしやすいとも考えられます。
なにはともあれ、文字単価というのは実質「文字単価×最小文字数=記事単価」と考えておけば概ね間違いはありません。
極稀に、本当に文字数に単価を掛けてくれるクライアントもいますが、端数計算が面倒なこともあり、ほとんどのクライアントは記事単価での支払いになります。
記事執筆は、実は書く以外の作業のほうが多い
「高単価の案件をたくさんこなして、毎月100万円200万円の高収入を得たい!」という方が、単価アップを頑張っていらっしゃるのをよく見かけます。
単価が高い記事は求められる物が多い分、モチベーションも上がり、案件を通して学ぶこともたくさんあります。より大きな収入やステップアップを目指し、高単価案件の獲得を頑張っている方も多いでしょう。
しかし、高単価に惹かれて案件を取ったものの、時給に戻した時に驚きの低時給になることがあります。それはずばり、「時間の見積もりが甘すぎた」ケースです。
記事執筆には「調べる」「書く」「修正」の3フェーズがあります。
この中で時間がかかるのはどのフェーズだと思いますか?「書く」のに一番かかると思う人も多いでしょう。しかし、実際に一番時間がかかるのは「調べる」部分なのです。
記事には正確性が求められるため、「ファクト」と「エビデンス」を添える必要があります。監修を務めるような専門家やその分野の第一人者であっても、引用した論文や数値、論拠となる情報を添えています。
執筆に必要な情報をリサーチし、論拠となる正確な一次情報を集め、内容を噛み砕いて文章に落とし込むところまでが「調べる」時間になります。
この作業、よく知っている分野でも時間がかかるものですが、知らない分野では更に数倍の時間が掛かり、執筆に必要な情報を集めるだけで一苦労です。
結果として、想定していた何倍もの時間を、執筆作業に費やすことになるわけです。
書き終わって一安心、提出して終わり!……ではありません。執筆後もクライアントのチェックがあり、1~2回では終わらない修正依頼に対応するケースもあります。
前述の通り、文字単価が高い記事の場合は、企画構成からすべて担当する案件も多くなっていきます。
文字単価だけを見て作業の内容を精査せず、安易に受注すると、実際に必要となる作業時間が見積もりを遥かに超えてしまうというわけです。
時間単価と工数に置き換えて考えよう
1記事を執筆するのに必要な時間は、私の経験ベースでは以下のとおりです。
- 受注とそれにまつわるクライアントとのやり取り
- 企画から発注の場合は企画の作成
- 執筆に必要な情報を収集してまとめる
- 情報をもとに企画に沿って執筆する
- 提出した原稿の修正依頼に対応する
では、これらをすべて含めた時間を仮に「執筆時間」として、具体的な数字と置き換えてみましょう。
[box04 title=”文字単価5円で3,000文字の記事を書く場合”]執筆時間
4時間:時給3,750円
8時間:時給1,875円
10時間:時給1,500円
16時間:時給937円[/box04]
なんと2日がかりで書くと、東京都の2021年の最低賃金1,041円/時を下回りました。
この記事の場合、時給2000円を割らないためには、企画構成の作成から執筆、修正、それらに付随する顧客対応まで含めて、1本辺り7.5時間で完結する必要があります。
ざっくり「執筆時間」とまとめましたが、これは実際には工数という作業量の単位で考えます。工数とは例えば「1人でこなすと1日かかる作業量=1人日」という考えです。
7.5時間の内訳が「企画作成(1時間)+調査(3時間)+執筆(2時間)+顧客対応(0.5時間)+修正対応(1時間)」だとすれば、実際の執筆の工数は2人時になるわけです。
この工数は一体、収入アップにどう影響するのでしょうか。次の項目で詳しく説明していきます。
文字単価を時給に換算して、全体の工数で考えよう
さて、ここであらためて3000文字の記事で考えてみましょう。
文字単価が0.5円でも、ほとんど調べる必要がなく、ファクトチェックなども要求されず、修正依頼もなく、1時間で書けてしまえば時給は1500円です。
一方で、文字単価が5円でも、要求が多く執筆にまつわるすべての時間を合計して10時間掛かれば、やっぱり時給は1500円です。
つまり、見た目の文字単価が高くても、不慣れな工程や要求される工数が多い案件は、低時給になり得るわけです。
執筆に必要な調査の時間+実際に文章を書く時間+付随する執筆以外の作業=その案件の必要工数
この工数を意識することで、文字単価を含めた収入アップの糸口が見えてきます。
しっかりとした対応をしてくれる良質なクライアントを選んで、よりよい案件を獲得していくのはもちろん大切なことです。そして、単価が高いクライアントの案件ほどその傾向が強いのも事実です。
しかし、単価だけが案件の質を決めるわけではないことは、もうおわかりでしょう。
仮に高単価でも、クライアントからの修正依頼の回数が異様に多かったり、最初にはなかった要件が後出しで増えたり、CMS入稿用のHTML装飾を求められたり、毎月発注が安定しないのに納期が短かったりと、なにかと要求が多く工数が増大する案件は、いい案件とはいえません。
逆に単価が低くても、毎月決まったタイミングで一定額の発注が安定しており、単価に見合った作業内容で後出しもなく、工数も少なく、予定の見通しが立てやすい案件は、良質な案件といえます。
収入をアップするために質の良い案件を選んでいくには、「案件を工数に分解して時給換算してみる」習慣を身に着けておくのがおすすめです。
時間単価のアップには、専門分野と得意分野を作ろう
時間単価のアップには案件の選別だけでなく、工数の削減も大切です。
執筆において「調べる」工程がもっとも時間を使うという説明はすでにしましたが、実際に一番工数を減らしやすいのもこの「調べる」部分です。
実際にどうすれば「調べる」工程の工数を削減できるのでしょうか。
これはとてもシンプルですが「専門」を作る以外の方法はありません。
多くのライターが、自分の得意分野、専門分野を持っています。一見、どんな執筆ジャンルでも対応するマルチジャンルのライターもいますが、「取材力が飛び抜けて高い」「知らない分野でも調査から理解までの時間が非常に早い」「撮影能力がプロカメラマン並み」などの、執筆ジャンルではない専門性を持っています。
専門を高めていくことで、工数を削減するだけでなく、その分野においてスペシャリストとして評価と付加価値を上げる2軸で収入アップを目指していけます。
ここで意識しておきたいのが、専門分野を絞り込むだけでなく、それに別の分野を紐付け「得意」な分野を同時に育てることです。
専門分野を軸に得意分野を広げることで、同じ専門分野の他のライターとの差別化が図れるだけでなく、より多くの分野からの受注が見込めます。
「それならいくつも得意分野を持てばいいじゃないか」と思うかもしれません。
しかし、専門として深めている人に対して、ある一定のラインを境目にして、太刀打ちできない透明な壁にぶつかる瞬間があります。そしてそこが「専門外」の単価の頭打ちでもあります。
なので、最初は並行して複数の得意分野を持っていても、いずれ、自分が専門として深めていきたい、強みを持ちたいという分野は絞り込んだほうがいいでしょう。
そのうえで、興味がある分野を自分の専門と紐付けて、裾野を広げ、得意分野を育てるのがポイントです。専門分野を軸にして、枝葉として得意分野を広げれば、案件の間口を担保しながらブランディングできるというわけです。
まとめ
収入アップを目指したい場合は、単純に文字単価に囚われず、案件を工数で分解して、時間単価に置き換えて考えてみましょう。
良質な案件とは、単純に専門的で文字単価が高い案件ではなく、工数が少なく、時間単価が高く、競合が少ない案件です。
執筆にかかる工数の中で一番大きいのは「調べる」時間なので、専門性を持ち、調査時間を短くすることで、工数を削減しながら自己ブランディングもできます。
文字単価は一見わかりやすい指標ですが、そればかりを追いかけていると、思うように案件が取れなかったり、本数をこなせず、結果が出せない泥沼に陥ってしまいがちです。
一度自分の抱えている案件を工数ベースで分析し、整理してみると、良質な案件を選び取って効率的に収入アップに繋げられるはずです。