Wikipediaは、Webを使用するなら知らない人のほうが少ないほど有名な、多言語インターネット百科事典です。
ライターとして執筆依頼を受け、情報をWeb検索していると、ちょくちょく上位表示で見かけるため、参考文献として添付する人もいるのではないでしょうか。
私も以前は納品したテキストにWikipediaのURLを添付していたのですが、ある時、編集の方から「Wikipediaは参考文献として引用しないで欲しい」と言われました。
Wikipediaは本当に参考文献として引用できないコンテンツなのでしょうか。理由とともにWikipediaの執筆に活用する方法を解説していきます。
目次
Wikipediaとはどういうメディアなのか
Wikipediaは2001年1月15日にジンボ・ウェールズが個人で開始した「Web百科事典」を作るプロジェクトです。
2003年6月からは非営利団体ウィキメディア財団に運営が移り、閲覧者からの寄付のみで運営されています。Wikipediaを閲覧していると寄付を呼びかけるメッセージが表示されるので、知っている方も多いのではないでしょうか。
Wikipediaは情報の中立性を維持するため、スポンサーや広告を掲載しない方針を守って運営しています。最近Wikipediaを装い、情報をコピーして大量の広告を貼り付けたサイトが複数発生していますが、悪質なコピーサイトなので注意してください。
Wikipediaは多言語百科事典というだけあって、非常に多様な情報が集まっています。まとまった資料と情報がWikipediaにしかないようなマイナーな物もあり、まさに情報の集積地といえます。
これらの情報は、不特定多数のネットユーザーが追加、編集、執筆をすることで収集されています。
2021年8月16日時点で、1,284,509件の記事が掲載されているそうです。
編集・執筆は誰にでもできるの?
Wikipediaの編集・執筆は誰にでも可能です。ただし、守るべきルールや、同意する必要がある方針、ガイドラインがあります。
例えば、編集にあたっては以下のようなルールが存在します。
- 著作権を侵害しない
- 検証可能性を満たす
- 独自研究は書かない
- 中立的な観点で書く
- 百科事典であることを意識する
- 他の編集者と争わない
詳細はWikipediaの「方針とガイドライン」と「五本の柱」を参照してください。
ルールさえ守れば、誰にでもすぐに編集できてしまう点が、「すぐに内容が変わり、また、誰が編集したのかわからないため、情報の正確性や信憑性に欠けるので引用元としては使えない」として、提出する原稿のファクト元にできない理由に挙げられています。
編集・執筆には厳格なルールがある
しかし、本当に信用できない情報なのでしょうか。実は、Wikipediaはなんでも書いていいわけではありません。
前項でも挙げた「検証可能性」を非常に重視しています。検証可能性とは、「信頼できるソース(情報源)を参照することにより「検証できる」内容だけを掲載してよい」ということです。
信頼できる情報源が公表・出版している内容だけを書くべきとされ、信頼できる情報源(出典・参考文献)を明らかにする必要があります。
出典が不明確な内容の編集は、誰でも削除できるルールになっており、出典が明らかにされていない、あるいは不明確である記事には注意が表示されます。
つまり「Wikipediaに掲載する内容には、必ず正確で信頼できる一次情報が必要」ということです。
実際にWikipediaの記事を見ると、たくさんの引用元や参考文献が記載されているのがわかります。
Wikipediaは不特定多数の手で編集できますが、その内容は透明性が高く正確なものも多いということです。
引用にも細かなルールがある
Wikipediaは誰でもすぐに編集でき、変更内容がすぐに反映されます。そのため、URLを出典元として添えても、自分が見た時と相手が見た時で内容が異なる場合があります。
この点は「ウィキは紙ではないので、普段使われる書籍用の引用書式は使えないかもしれません。随時書き換えられ、内容が変わってしまうからです。」として、Wikipediaも考慮しています。
そこで、Wikipediaは引用ルールとして使用している記事の版の「時分を含む更新日時」を記載することを求めています。
いつの時点で編集された版を引用元としているのかを明確にすることで、刻々と編集されて変化するWikipediaから引用された情報の正確性を維持するというわけです。
ちなみにWikipediaの過去の版は、記事右上の「履歴表示」をクリックします。
そうすると、以下のような編集履歴が表示されるため、引用元とした記事の版に遡れるというわけです。
Wikipediaが参考文献として引用に向かない3つの理由
さて、本当にWikipediaが参考文献として引用に向かないのか、具体的に検証してみましょう。
先ほど説明したとおり、Wikipediaの記事は検証可能性がある必要があります。つまり、情報のリソースとして、公的な機関の発表や研究論文などが存在することが必須です。
しかし、Wikipediaは情報が不十分なものや議論中のものも掲載できてしまうのです。記事によっては情報不足な部分に「出典不明」とコメントが付いているものや、議論が紛糾して「編集合戦」になってしまい、編集がロックされているものもあります。
特にセンシティブな内容の記事は、論争の対象になりやすく、刻々と内容が変わってしまうこともしばしばです。
また、Wikipediaの記事には情報が不足している記事も少なくありません。残念ながら、必要とされる情報量は規定がないため、わずか200~300文字でさらりと解説されているだけのページも多いのです。
そして、検証可能性がある情報を添えることがルールとされていますが、その情報が必ず正確であることをチェックし、責任を負う人は誰もいません。自浄作用とユーザーの善意によって更新が維持されていますが、それが隅々まで及んでいるとは限らないのです。
なにより、Wikipediaはさまざまな情報を集めてまとめているため、Wikipediaの記事は一次リソースとはいえません。
以上の理由から、WikipediaをWebライティングの参考資料としたり、論文の出典元とすることは、あまり勧められるものではないのです。
Wikipediaを執筆に活用するポイント
では、Wikipediaは情報リソースとして活用できないのでしょうか。実は、そんなことはありません。
検証可能性があることを求めるWikipediaのページには、膨大な数の引用元、参考文献が添えられています。これらの資料はWikipediaが求める通り、一次情報であり、また公的な機関や報道機関による情報です。
そこで、自分が執筆したい資料を集める時、Wikipediaを活用する方法があります。
ジャンルによっては一次情報になり得る情報が上位サイトに埋もれてしまい、探すのに苦労することがあります。
そういう時にはWikipediaを確認すると、論文や統計、あるいは過去の新聞や雑誌など、Web検索だけでは探しにくい情報を見つけられます。
関連する他のWikipediaページへのリンクも多いので、横方向に情報が集められるのも百科事典ならではのメリットです。
引用元としてWikipediaそのもののURLを添えるのを避ければよいだけなので、執筆時の参考にするのは特に問題はありません。
一つの物事に対して、情報が整理されて集まっているページはなかなかありませんから、有効に活用すればライティングの力強い味方になってくれます。
Wikipediaは読み物としても面白いので、是非、使ってみてください。